嗚呼、先がない。
先が見えないよ。


いたって普通の人生。もう先が見える。
予想できるものなんて興味がない。面白くない。
言動が読める人間も、展開が読める本も、皆つまらない。
私も同じ、つまらぬものになろうとしている。
それに幸せを覚えてしまったから?


時間をかけて夕餉を作り、話しながらそれをゆっくりと食べ、
お風呂に入って、本を読んで、抱き合って寝て・・・


「また明日になれば仕事に行かなくちゃ。」



時計は止まってくれない。あんなに遅く時間は流れていたのに。



やりたいことは何だったっけ。
全ては虚構だったっけ。
何も残らないのだったっけ。
せめて静かに生きたい。





何も聞こえてこない夜の闇の遠く
雪の似合うベルの音が響いてることだろう
寒い中 人の流れの中 今頃何を思っているだろう


ただ二人で眠り続けるだけでは許してくれない世界
甘えてるだけ 甘えてるだけなんだけれど
一体其れの何がいけないの


悲しいことなど何もないのに
叫んでも恥ずかしくないほど幸せなのに
何も残らないかもしれないぬるま湯かもしれない
幸せの雰囲気が暗黙の了解になる


聖夜?
誰のための?
私たちは綺麗ですか?


死を想う
いつか訪れるだろう混沌を想う
死にたくて死ぬのが怖くて死ねなかったあの頃の面影はなくて
私はこの世界に執着を持ち
愛する人のためだけで生きることはなくなってしまった
愛する人なしでは生きていけないのは変わらないのに


何故恐怖するのだろう
あの頃は怖くなかったのに
歳を取ったのだろうか
私の後ろから着実な足音が聞こえる



急にすがり付いて泣き出した私を彼は不思議に思うだろう
その後彼が何をするのか予測する


その頃もう私は今まで会った悲観など忘れて
その幸せの程度を贅沢に嘆くだろう
両腕に抱かれて 安堵のため息をついて


其れを得るまでは何だか分からなくて
まるで壊れ物を扱うようだったけれど

きっと幸せは
もう予測できるような ありふれたもので
そんな特別なものじゃないんだ