鍵
鍵を集めよう。
もう何を封じる必要もなく、ただそこにあるだけの古びた鍵を。
それは物理的にではなく、幻想で何かを閉じることが出来るだろう。
染みこんだその翳りで形ないものを開くことも出来るだろう。
本来の役目から外れて
(人間としての役目を外れて)
ただ居るだけの存在を
(生きるだけで価値があるのならそれで)
ほんの手違いで錆びて朽ちてしまっても
(壊れていてもいき続けなくてはいけない)
(怖すぎて壊れられない?)
そこに居る必然性は元からないのだから
(存在は無へと循環し、実在から離れ、風化する)
鍵を集めよう。
もう何も課されていない鍵を。
「誰かの心に怯えないために強くなろうという強迫観念を抱く」
「誰かの心を傷つけないようにと傲慢を盾に優しさを振りまく」
過食症の天使は迎えになど来ない
堕する勇気もないまま膝を抱えてうずくまる
鍵を集めよう。